Michiyo’s 『道』 BLOG!

こんにちは。慶児道代です。私のブログへようこそ!

声楽を教える...【Part2】

音楽院には 7年勤めました。

教え始めると、成長に大きく個人差があるこの時期に、身体そのものを楽器とする声楽を、学校教育のシステムに嵌め込んで教える事への疑問が 大きく膨らんでいきました。
勤務し始めて早いうちに、「ここに居たくない!」という思いが湧いてきましたが、私を信じてついて来てくれる子の事を思うと、簡単には辞められないな...と思いました。
「学生は、入学後 6年間この学校で勉強する。私も、最低6年間は ここで 『指導者になる勉強』を彼らと共にしよう。」と自分に言い聞かせながら、頑張りました。

生徒は 入学時 最年少が14,15歳で、変声中の子が殆どです。変声中という事は、ホルモンバランスが日々変化し、精神面も安定していない、『思春期』です。
身体と心が急激に変化しているこの時期の生徒達を一列に並べて 成績をつける事で 本来 芸術家として大切に育てるべき筈の『個』= 『日々変化する彼らの価値観、不安定な身体や精神を持つ成長期の生徒達の尊厳』を無視している、という思いが否めませんでした。何が何でも結果を出す事(認められる事)を良しと思う子が育つ事が悲しく、変声期であるが為に思う様に歌えず 無駄に歌への想いを挫かれてしまう子が哀れでした。

未来のある生徒たちの事を思って、段々と 様々な事への抵抗が 大きくなり...、私は 体調を壊しまくってました。

今 振り返ると、本当に少数ですが、そう言う中でも 全くブレずに コツコツ 自分に取り組める子は居ました。育つ子はどんな環境でも育つ!我々は 出来る限り彼らに寄り添って 共に考えてやる事が大切!と言う事なんだとは思いますが…、そういう子は、音楽院に 来ても 来なくても自分で道を切り拓くだろうと私は思います。

『声楽を学ぶ』と言う事は 他の楽器の習得とは全く違います。思春期の身体が激変している時期には、落ち着いて積み重ねる勉強は出来ません。ただ 認められたくて、大きな楽曲にばかり取り組み、在学中に声楽の勉強が原因で 喉に負担をかけ 声を壊して 医者にかかる子を何人も見ました。
「何の為の学校か!」と情けなく悔しく...怒り心頭に発していました。

思春期の生徒達には、日々変化する自分の身体と向き合いながら、コツコツと自分の身体を楽器として捉える目を養う事が大切だと 私は 思います!
『楽曲をある程度の完成形に仕上げる』事と同等に、もしかしたら、それ以上に 『人間の根源を豊かにする』事に 目を向けるべきだと思います。

 

音楽院は7年務めた後、退職しましたが、この7年間は これまで私の中に点在していた様々な情報を整理し直す良い機会となりました。
生徒を指導しながら、自分の中にバラバラに配置していた背骨を、一つ一つ組み立て直していました。
3年目くらいには、『自分のメソード』の背骨が頭を除いて立ち並んだ感じで、何かもう一つ見つけたら、全ての筋が通る様に感じていました。

色々調べて、聴いて...、イタリアで教えられている『ベルカント』に興味を持ち 休みが出来ると イタリアに飛んで 色々な先生の扉を叩き 教えて頂いたり、レッスンを見学したり…。

生徒の為に悩んだ事は 、一番私の為になりました。心労激しく 体調も壊しまくり 色々と行き詰まりを感じて辛い日々でしたが、音楽院での経験を頂けた事には、心から感謝しています。

 

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 (2017年8月 イタリアのサンタ・マルゲリータ・リグーレ国際音楽講習会の修了コンサートにて...)