YouTubeでお勧めに出てきた、渡辺茂夫さんのドキュメンタリー番組を見た。
https://www.youtube.com/watch?v=ERMgPcG2EdI
戦後の日本で天才少年と呼ばれ、14歳でアメリカに渡ったが、2つの文化の中で、その才能は押し潰されてしまった。
16歳、大量の睡眠薬を服用し、脳に障害が残る状態で帰国、ご両親の元で40年以上在宅療養を続け58歳で亡くなられている。
数年前にも一度見た映像であったが、今回は私の視点が変化していた。
ドキュメンタリー番組の映像の中で、撮影時のお父様との日々が紹介されていている。
ほぼ植物人間だった茂夫さんを独自のリハビリで、数秒立つことや数歩 歩けるまでにしたお父様…。
人々は失われた才能に注目したくなるだろう。
しかし、私は、映像の中の茂雄さんの瞳に、親からの愛を注がれているその瞬間、その時間を得られて、彼という人間のコアな部分が満足している様に感じた。
人がどう見ようと、晩年の彼は幸せだったのではないか…と思った。
天才と聞くと、通常の努力をせずとも…と思う人がいるのかもしれないが、努力なしであれだけの演奏はあり得ない。
その努力を否定される様な状況の中で、茂夫さんは自分を信じることが出来なくなったと思う。
自分を信じられない、自分を愛せない = 誰も信じる事ができない
異国で国の期待を背負いながら、恐ろしい孤独の中におられた筈…
人間として一番大切なものが欠けてしまうと、人は生きていけないんだ…。
音楽家である前に、まず人間でいられる事について…考えた。
辻井伸行さんの演奏に初めて触れた時、かつて…ピアニストだった時、見たくないものがあったんだろうなと思った。
両親を選び、視覚障害を選び、この世に産まれて、努力を重ねて、重ねて、再びピアニストになられたんだなと感じた。
渡辺茂夫さんの魂は、今 どこに居るのだろうと考える。
少年時代の演奏だけが残っているけれど、そのどれも、既に熟していた様に聴こえる。
もう一度、バイオリニストになるのかな?
もう充分…かもしれないし、やり残したものが... もしかしたら あるかもしれない...。
色々なことに思いを巡らせて、早朝からブログを書いた。
庭の林檎、熟れてボトボト落ちてくる。
形は悪いが、結構 甘くて美味しい。